解雇通知は突然に
チョウ氏と初めて出会ったのは、資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)市場が機能不全に陥り、金融市場に激震が走った直後だった。13丁目にあるCafé Devilleでアメリカ人の友人と食事をしていたところに、彼が黒塗りのレクサスSUVで悠然と登場したことをまるで昨日のように覚えている。筆者が手入れの行き届いた車を褒めると、「買ったばかりなんだよ」と説明しながら満足そうにニッコリ微笑んでいたものだ。
当時、彼は昇進したばかりだったという。元モデルの香港系の女性と結婚したばかりだっただけに、当時を思い返しながらチョウ氏は「あの時は物事が何もかもが上手くいっていたなぁ」と頬杖をつく。そして記憶の糸を手繰り寄せるように「彼女と一緒にミートパッキングやソーホー、アップタウンからダウンタウンとあらゆる場所へ車で乗り付けたものさ」と言葉をつないだ。38歳の彼にとって、レクサスは紛れもなく「成功の証」だったようだ。
ところが、絶好調な彼の日々は突然幕を下ろすことになる。月曜日、いつもの通りチョウ氏が出社するとブロンドをなびかせながら上司が彼のデスクを訪れ、一呼吸を置いてから「広告の受注キャンセルが相次いでるの。残念だけれども辞めてもらうことになったわ」と解雇を宣告したそうだ。チョウ氏は「聞いた瞬間、床に突然ポッカリ穴が開いて座っていた椅子ごと奈落の底に突き落とされた気がした」と、振り返る。昇進してから、約1年で彼は退社を余儀なくされてしまったわけだ。(続く)
(03/28 02:11) |